ワクチン選びは慎重に

新型コロナウィルスに対抗すべく、日本でも高齢者からワクチン接種が始まり大規模接種センターも開設されつつあります。希望の光が見えたかのように思えますが自分には希望より不安の方が大きく、先日いつも潰瘍性大腸炎の診察をして頂いている主治医の先生にワクチンについて直球質問をしてきました。


Covid-19 Vaccine



従来のワクチンは、結核・風疹・おたふくかぜなどに使われる症状が出ないように限りなく弱くした病原菌そのものを入れる「生ワクチン」、インフルエンザ・百日咳・日本脳炎・狂犬病などに使われる病原菌にいろいろな処理をして病原性をなくしたものを入れる「不活性化ワクチン」などがあります。インフルエンザワクチンは大量の鶏卵を準備しなければならないことやワクチン製造に半年~1年の期間を要することから、近年では鶏卵を使わずに遺伝子組換え技術によって短期間に大量のワクチンが製造可能となった事で、この方法が主流になりつつあるそうです。



アメリカのファイザー社とモデルナ社のワクチンは「mRNAワクチン」と呼ばれ、イギリスのアストラゼネカ社、アメリカのジョンソン&ジョンソン社(ヤンセン社)のワクチンは「ウィルスベクターワクチン」と呼ばれるものです。分かりやすくこの「mRNAワクチン」と「ウィルスベクターワクチン」の違いを説明すると、新型コロナウィルスに刺さっているブロッコリーのような突起物(スパイクタンパク質)の遺伝情報を入れている入れ物が違う点にあります。



〇「mRNAワクチン」「ウィルスベクターワクチン」とは

mRNAとはメッセンジャーRNAと呼ばれるもので、いわゆる新型コロナウィルスの設計図のようなものです。

人間の体の中には「遺伝物質」であるDNAが存在しますがDNAは唯一無二の存在であり、人間が体の中でタンパク質を作り出すためにはDNAから設計図をコピーした物質であるmRNAが作られ、このmRNAからタンパク質が作られます。

昔に比べて遺伝子解析の技術も精度も上がっているため、新型コロナウィルスから取り出した突起物(スパイクタンパク質)の設計図であるmRNAだけを遺伝子組み換え技術を使い人工的に作っていく訳ですが、mRNAは非常に壊れやすい性質を持っているため、これを人工的に作った脂質の膜に入れたものが「mRNAワクチン」と呼ばれており、人に感染しないように遺伝情報を改変したアデノウイルスなどの中に入れたものが「ウィルスベクターワクチン」と呼ばれています。


ちなみに「ウィルスベクターワクチン」のベクターとは、人体に無害な改変ウイルス(アデノウィルスなど)の「運び屋(ベクター)」という意味があります。記憶が定かではありませんが、ロシアで開発された「スプートニクV」も「ウィルスベクターワクチン」だったと記憶しています。



〇新型コロナウィルスワクチンの作用

先述したmRNAを注射で体内に送り込む事になりますが、まず人体の細胞にmRNAが取り込まれ、細胞がもともと持っている「mRNAからタンパク質を作る仕組み」を利用して設計図通りに新型コロナウィルスに刺さっているブロッコリーのような突起物(スパイクタンパク質)を作り出します。

次に作り出されたスパイクタンパク質は細胞外に放出され免疫細胞に捕食されたのち分解されてしまいますが、このとき免疫細胞はスパイクタンパク質の破片を細胞の表面に送り、別の種類の免疫細胞がその破片を目印に新型コロナウイルスを“敵”として認識するようになります。

このようなプロセスを経て敵を攻撃する「抗体」が作られ、実際にスパイクタンパク質を持った新型コロナウィルスが体内に侵入した場合、即座に敵として認識し攻撃を開始するのが新型コロナウィルスワクチンの作用になります。



〇なぜ不安なのか

「mRNAワクチン」と「ウィルスベクターワクチン」に使われているRNAワクチン(mRNAワクチン)の技術は約30年ほど前の1989年に初めて実験がスタートし、ヒト細胞への導入も盛んに研究されるようになると今回ワクチンを製造しているバイオテクノロジー企業であるモデルナ社などが設立されました。

しかし、心血管疾患、代謝疾患、腎臓がんなどに焦点をおいてmRNAを薬剤としてテストした結果、細胞にmRNAの取り込む際の副作用が深刻すぎることがほとんどであることが分かり、2020年までに多くの大手製薬会社はmRNAを使った技術を放棄しています。


2020年12月以前までヒトでの使用が許可されたmRNAワクチンは存在していなかったのですが、モデルナ社とファイザー社が緊急下の中で臨床試験の許可も得てmRNAをベースにした新型コロナウィルスワクチンの開発を始め、後に世界史上初のmRNAワクチンが承認される運びとなりました。mRNAワクチンに関する特許出願は113件あり、狂犬病やジカ熱、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症を対象に臨床試験の実施例があるため、これらの実績を応用できたから素早くワクチンが開発されたそうですが、それでも成功より圧倒的に失敗が多かった技術です。

通常のワクチン開発は10~15年はかかると言われている中で、新型コロナウィルス蔓延直前まで副作用が深刻で多くの大手製薬会社が技術を放棄したmRNAの技術が救世主のように復活し、今までの知見や副反応の発生状況などを鑑みて安全性に問題は無いと言われても自分の中では希望より不安の方が大きかったのです。



また、DNAからmRNAが作られる流れは一方通行で、逆にmRNAからはDNAは作ることはできないしmRNAは核内に入ることができないためmRNAは人の遺伝情報(DNA)に組み込まれることはありません。しかしレトロウイルスという種類のウイルスはRNAからDNAを作ることができ、感染した細胞のDNAの中にウイルスの遺伝子が組み込まれるという現象は起こりえるが「逆転写酵素」というタンパク質が必要で、人間の体内には存在しないしワクチンには逆転写酵素を作るmRNAは含まれていないため安全だとする解説を見聞きしています。

ただし、将来的に何かの病気の治療や投薬などにより「逆転写酵素」というタンパク質が体内にできてしまった場合、遺伝情報(DNA)に組み込まれる可能性はあるとも解釈できます。


海外でのワクチンの開発状況



〇主治医の意見

それらを踏まえて主治医に相談してみた所、現在出回っているワクチンを積極的に打つのはおススメしないとの話でした。どうしても今ワクチンを打たなければいけない人は次の2パターンに当てはまる方だそうです。


・どうしても仕事や旅行で出掛けなければいけない人

・人と接する事が多く感染リスクや重症化リスクの高い人


あまり積極的に報道はされていませんが、塩野義製薬(感染研/UMNファーマ)が組換えタンパクワクチン、KMバイオロジクス(東大医科研/感染研/基礎研)が不活化ワクチン、ノババックス社(武田薬品工業が原薬から製造販売予定)が組換えタンパクワクチンなど、従来型ワクチンの開発や試験も進みつつあり、早ければ今年の年末頃から遅くとも来年の春頃までには承認される見通しが立っているものもあるそうです。そのワクチンが出るまで待つのが良いとの意見でした。


国内でのワクチンの開発状況



すでにファイザー社やモデルナ社のワクチン接種が始まっていますが、16歳未満への接種に消極的なのは将来的な健康被害やリスクが大きいのではという話や十数年後に遺伝子組み換え人間になるのではといった話もネット上で散見されますが、真偽不明な話に惑わされて心配なら日々の感染症対策をシッカリしつつ安全だと思われるワクチンが世に出て来るまで待つしか無いと思います。

自分は接種が始まったワクチンの安全性を否定している訳では無く、今までの技術の進歩や歴史の面から見てmRNAワクチンが本当に信頼できるものなのか判断ができなかったため普段お世話になっている主治医の先生との会話や意見も参考にして、この記事を書く事にしました。

mRNAワクチンについては安全性も技術面も全く問題ないと仰る医師もいれば自分の主治医のように難色を示す医師もおり、真っ二つと言っていいほど意見や見解が大きく分かれます。うがい・手洗い(アルコール消毒)・不織布マスク着用をキッチリ実践し、人の多い所には出掛けない、会食は極力避けるなどの行動が伴えば予防できる事もこの1年ちょっとで体感しています。得体の知れないワクチンを急いで打つより従来型のより安全性と信頼性の高いワクチンが出て来るまで自分は耐え凌ごうと思っています。



ライフスタイルも考え方も人それぞれです。早く安心した生活をと思うなら迷わずワクチンを接種すべきだし、自分のように希望より不安が大きいなら待って見るのも良いかも知れません。

ただ厄介な事にウィルスが次々と変異を繰り返しているので、ワクチンを接種しても別の変異株のウィルスに再感染する可能性は充分に考えられます。それでも抗体があれば重症化のリスクは軽減できるので安心感はありますよね。
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