ここ10年くらい毎年のように暑くなっているように感じます。
エアコンや空調に関して「夏は28℃、冬は18℃」という言葉を聞いた事がある方は多いと思います。
実は、この温度に関して誰が決めたものなのか根拠が何であるのかハッキリしないのはご存知でしょうか?
政府広報や電力会社の広報などで目にはしますが、なぜこの温度に設定されたのかハッキリとした根拠はないのです。それどころか、夏に28℃に設定した室内にいると命の危険さえあります。
ではなぜ夏は28℃となったのでしょうか?
電力会社が単独で決める事は考えにくく政府広報でも夏は28℃と言っている事から、関係省庁が数値目標を立てたと考えるのが自然です。
関係省庁が数値目標を立てたとなると、根拠となるのは法律・法令・条例にあるのでしょう。
そこで調べてみた所、関係しそうな2つの法律・法令・条例を見つけました。
1.
事務所衛生基準規則(昭和四十七年九月三十日労働省令第四十三号)
第二章 事務室の環境管理 第五条 3
事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない。
2.
建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令(昭和四十五年十月十二日政令第三百四号)
第二条 一 イ 四 温度 一
十七度以上二十八度以下
夏は28℃という温度は、法律・法令・条例で定める限界ギリギリの数値である事が分かるかと思います。
じゃあ夏は28℃で良いじゃないかと思われる方もいらっしゃるかも知れません。
この法律・法令・条例が施行されたのは昭和45年と47年ですが、1978年(昭和53年)に1つの学説が誕生します。
ジョージ・ウィンターリングが1978年に考案した、現在ヒートインデックス(体感温度)と呼ばれるヒューミチャーです。
事務所衛生基準規則にも書かれてありますが、気温の他に湿度がとても重要な意味を持っています。
日本の夏は高温多湿な傾向があり、エアコンの冷房や除湿の機能を使っても部屋の湿度は60~65%くらいである事が多いそうです。つまり、湿度60~65%で快適な温度に設定しないと意味が無い事になります。
先ほどのヒートインデックス表を見ると、湿度60~65%で快適な温度は26℃という事になります。
この26℃という温度は民間企業の研究などでも最適な温度とされ、電車の中やお店の中で最も採用されている事が多い温度です。
暑がりの方が暑いと感じない限界の温度であり、寒がりの方が寒いと感じない限界の温度でもあります。
28℃では湿度55%を超えると警戒となり、湿度75%を超えると厳重警戒となります。
簡単に言ってしまえば、生産効率が下がり動かないでジッとしていなければ熱中症になりやすいと言う事です。
エアコンを28℃で快適に使うためには湿度55%以下である必要があり、日本の夏では絶望的です。
扇風機やサーキュレーターを使えば大丈夫と言う方もいるでしょう。
暑いと風があっても体感温度はあまり下がらないというヒートインデックスの特徴もあり効果は限定的と考えられ、扇風機やサーキュレーターも電気を使うため省エネの観点からもエネルギーの無駄になります。
エアコンの使い方にもコツがあり、頻繁に電源のON/OFFを繰り返すと無駄にエネルギーを消費します。
電源を入れると部屋を早く冷やすために最大電力で動く特徴に起因します。
長時間外出する以外は26℃でエアコンを付けっ放しにするのが人間にも優しく省エネにも良い事になります。
東日本大震災による電子力発電所の停止や計画停電の経験などにより、節電意識も高まっているかと思います。
過剰で過酷な節電をして、具合を悪くしたり熱中症などにより体を壊したりしたら余計な費用がかかります。
家庭や職場・学校などで暑さに耐える節電をしても非生産的で非効率になるだけです。
エアコンの正しい使い方と根拠のある学説に基づいた快適な生活と節電を心掛けてみてはいかがでしょうか。